8月 がんに克つ!30 悪性リンパ腫に対する 化学療法の進歩/血液内科/がん認定・専門薬剤師
【特集】がんに克つ!30悪性リンパ腫に対する化学療法の進歩
悪性リンパ腫は、血液細胞の一つであるリンパ球という細胞が「がん化」する病気で「血液のがん」の一つです。がん化するリンパ球の種類によって悪性リンパ腫は細かく分類され、その種類によって、治りやすいもの、治りにくいもの、あるいは治療をすぐに始めるもの、経過を見るもの、に分けられます。治療はおもに化学療法(抗がん剤治療)で、血液のがんは他のがんに比べて抗がん剤の効果が高いと言われています。場合により放射線療法(放射線の照射)を併用することもありますが、手術療法は原則として行いません。
抗がん剤の進歩によって、治りやすい悪性リンパ腫が治癒(完全に治ること)する確率は高まっています。また、治りにくい悪性リンパ腫も病気と付き合いながら生存できる時間が延びています。基本的な薬剤はCHOP(シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)という4種類の薬剤で、状況に応じてリツキシマブ、ポラツズマブベドチン、ブレンツキシマブベドチンという薬剤を追加する場合もあります。後三者は抗がん剤の中では抗体薬と呼ばれる新しい分野に属し、リンパ腫細胞(がん細胞)を特異的に死滅させる能力の高い薬剤です。また古くからあるものの近年その効果が再認識されてきたベンダムスチンという薬剤もしばしば使用されます。
最も新しい治療法は、免疫療法の考え方を応用した「CAR-T療法」といい、患者さんが元々もつ「がん細胞を死滅させる」という免疫力を強化するような処置(遺伝子操作)を患者さんの細胞に加え、効率よくリンパ腫細胞(がん細胞)を死滅させるというものです。この治療が行える施設は静岡県内では大学病院のみですが、この考え方に類似したエプコリタマブという薬剤が2023年に発売され、当院でも使用できる状況になっています。悪性リンパ腫の種類や患者さんの年齢によっては実施できない治療もありますので、詳しくは主治医にお問い合わせください。
文責:血液内科 部長 藤澤 紳哉
【診療科・センター紹介】血液内科
患者さんに寄り添い最適な医療を提供
血液内科は血液細胞に関する病気を診断、治療します。当科で扱う病気は悪性のもの(血液のがん)が多く、その治療は化学療法が大半を占めます。感染症を起こしたり、輸血が必要になったり、髪の毛が抜けたり、便秘になったり、辛いことが次々に起こってしまいます。そのようななか私たち医療スタッフは、それぞれの患者さんに寄り添いこの病気にどう対応していくのが最もハッピーかという点を常に考えながら行動します。治る見込みのある病気か、治らずに一生付き合っていく病気かなどの先(見通し)を読んだ情報を患者さんに提示し、長期的な段取りを組みながら、やるべきことを計画的に治療していきます。
文責:血液内科 部長 藤澤 紳哉(写真中央)
文責:血液内科 部長 藤澤 紳哉(写真中央)
【診療を支えるスペシャリスト】がん認定・専門薬剤師※
※がん薬物療法認定薬剤師、がん専門薬剤師などがんに関わる薬剤師資格の総称
がん治療における薬のエキスパート
がん治療の進歩により、抗がん剤の治療スケジュールや副作用対策が難しくなってきている中、がん認定・専門薬剤師はより安全ながん治療を提供するための活動をしています。医師と抗がん剤の種類や投与量を検討し、多職種で情報を共有しながら副作用を軽減するための対策を提案しています。患者さんやご家族にも抗がん剤の説明を十分に行い、治療効果や考えられる副作用などを理解していただき、不安を取り除けるよう気持ちに寄り添ったカウンセリングを行っています。
また当院では、がん認定・専門薬剤師が医師の診察前に面談を行う「薬剤師外来」を開設しており、事前に副作用や治療への想いを確認することで、安全にがん治療ができるよう努めています。
文責:薬剤部 辻村 行啓(写真 後列左)
文責:薬剤部 辻村 行啓(写真 後列左)
2024年8月号(冊子)
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