体外循環関連業務
心臓の手術をされる患者さんの手術中の生命を維持するために使用する人工心肺装置を中心に、心臓を保護する心筋保護装置、心臓の補助および心臓に血流を増加させる大動脈内バルーンパンピング装置(IABP)を医師の指示のもと、臨床工学技士が専門性を活かし操作します。
当院の人工心肺装置は2007年4月に勧告された安全指針に対するガイドラインの必修項目をすべて装備したシステムで、安全に、そしてより質の高い体外循環技術を提供しています。
当院の人工心肺装置は2007年4月に勧告された安全指針に対するガイドラインの必修項目をすべて装備したシステムで、安全に、そしてより質の高い体外循環技術を提供しています。
人工心肺中の様子
当院では体外循環システムの小型化を行うため1999年から分離型ポンプの採用とステリーシート、ショートコネクタの開発を行いました。
その後も低充填の人工肺、動脈フィルタ、分離型コントローラーと、各メーカーとともに共同開発し、各体重別のシステムは、世界で最も優れた低充填量を実現しています。2008年から動脈フィルタ内蔵型人工肺を採用し、さらなる充填量削減を実現しました。充填量を軽減することは、血液希釈の影響、すなわち酸素運搬能をできるだけ下げないこと、浸透圧を下げず水分バランスを適正に保ち体外循環の合併症でもある浮腫や肺への水分の貯留を最小限にします。具体的には術後の人工呼吸器使用期間、ICU滞在期間、入院期間の短縮にもつながると考えます。
また、輸血を使用しない無輸血体外循環の可能性が飛躍的に高まります。輸血は感染症やGVHD、小児では高カリウム血症や各種メディエーターの影響を受け、体外循環開始後の循環不全を起こす可能性があります。それらの影響を本システムを使用することで最小限にすることが可能となります。
以下に当院での体重別のシステムを紹介します。
その後も低充填の人工肺、動脈フィルタ、分離型コントローラーと、各メーカーとともに共同開発し、各体重別のシステムは、世界で最も優れた低充填量を実現しています。2008年から動脈フィルタ内蔵型人工肺を採用し、さらなる充填量削減を実現しました。充填量を軽減することは、血液希釈の影響、すなわち酸素運搬能をできるだけ下げないこと、浸透圧を下げず水分バランスを適正に保ち体外循環の合併症でもある浮腫や肺への水分の貯留を最小限にします。具体的には術後の人工呼吸器使用期間、ICU滞在期間、入院期間の短縮にもつながると考えます。
また、輸血を使用しない無輸血体外循環の可能性が飛躍的に高まります。輸血は感染症やGVHD、小児では高カリウム血症や各種メディエーターの影響を受け、体外循環開始後の循環不全を起こす可能性があります。それらの影響を本システムを使用することで最小限にすることが可能となります。
以下に当院での体重別のシステムを紹介します。
体重別のシステム
2019年12月12日現在
体重〔Kg〕 | ~4 | 4~7 | 7~11 | 11~17 | 17~30 | 30~ | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
無輸血 | 輸血 | |||||||||
充填量 | 110 | 115 | 115 | 125 | 130 | 230 | 430 | |||
〔ml〕 | ||||||||||
人工肺 | MAQUET | テルモ FX05 | MAQUET | テルモ FX15 | ||||||
QUADROX-i | QUADROX-i | |||||||||
人工肺充填量〔ml〕 | 38 | 43 | 99 | 144 | ||||||
動脈フィルタ | MAQUET | テルモ FX05 | MAQUET | テルモ FX15 | ||||||
QUADROX-i | QUADROX-i | |||||||||
リザーバ | テルモ RR10 | VHK31000 | テルモ RR40 | |||||||
メイン回路 | 5/32 | 3/16inch | 1/4inch | 脱血3/8inch | ||||||
サイズ | inch | 送血 8mm | ||||||||
ポンプヘッド | 75φ 1/4inch | 120φ | 150φ | 120φ | 150φ | JMS MIXFLOW | ||||
1/4inch | 1/4inch | 3/8inch | 3/8inch | (20ml) | ||||||
最大流量〔L/min〕 | 1.5 | 2.3 | 2.8 | 5 |
さらに、世界最小の充填量に加え、RP:reduced priming(脱血側を充填せずバックへ回収)とRAP:retrograde autologous priming(送血カニューレ挿入後、患者さんの血液を人工心肺装置に誘導し充填液と置換することで置換した液をバックに回収)を行うことで血液希釈を最小限にする方法に努めています。
人工心肺終了後はMUF:Modilfied Ultrafiltrationと言われる技術を使い、人工心肺回路内の血液を5~10分程度で血液が希釈前の状態に近づけるよう操作します。 また、この操作により水分バランスがさらに是正され、肺の血管抵抗が下がり循環動態も安定すると報告されています。
人工心肺終了後はMUF:Modilfied Ultrafiltrationと言われる技術を使い、人工心肺回路内の血液を5~10分程度で血液が希釈前の状態に近づけるよう操作します。 また、この操作により水分バランスがさらに是正され、肺の血管抵抗が下がり循環動態も安定すると報告されています。
RAP比較
対象
小児は心房中隔欠損症(ASD)、心室中隔欠損症(VSD)を成人では体重30kg以上の症例で、IABP、再手術、脳分離、透析患者、緊急手術、有血充填を除外した症例を、それぞれRAPを行った群と行わなかった群に分け比較。
小児は心房中隔欠損症(ASD)、心室中隔欠損症(VSD)を成人では体重30kg以上の症例で、IABP、再手術、脳分離、透析患者、緊急手術、有血充填を除外した症例を、それぞれRAPを行った群と行わなかった群に分け比較。
小児 : ASD,VSD | C群(N=35) | RAP群(N=35) |
---|---|---|
月齢(months) | 30.6±24.7 | 25.9±26.9 |
身長(cm) | 87.2±17.3 | 83.8±19.2 |
体重(kg) | 11.8±4.8 | 11.4±5.7 |
最低~最高 | 5.4~21.8 | 5.3~30.0 |
体外循環時間(min) | 69.9±29.7 | 75.2±27.1 |
大動脈遮断時間(min) | 41.6±23.4 | 44.5±21.1 |
成人 : 体重30kg以上 | C群(N=46) | RAP群(N=35) |
---|---|---|
年齢 | 55.7±22.5 | 52.2±17.7 |
身長(CM) | 157.8±10.3 | 161.4±10.3 |
体重(kg) | 52.5±12.6 | 59.8±14.2 |
最低~最高 | 31.8±92.5 | 35.2±78.2 |
体外循環時間(min) | 141.3±58.7 | 134.2±46.8 |
大動脈遮断時間(min) | 93.7±42.8 | 88.3±39.4 |
対 象 : 2004年1月~2006年8月
実際に臨床使用された充填量の結果
成人・小児でも最小値40ml台とほぼ無希釈で体外循環が可能な症例もみられる。
成人・小児でも最小値40ml台とほぼ無希釈で体外循環が可能な症例もみられる。
単位:ml
小児充填量 | C群(N=35) | RAP群(N=35) |
---|---|---|
初期充填量 | 186.1±43.4 | 168.2±49.5 |
RP・RAP量 | 93.9±36.4 | |
最終初期充填量 | 74.3±26.0 | |
最大値 | 357 | 147.5 |
最小値 | 135 | 40 |
成人充填量 | C群 | RAP群 |
---|---|---|
初期充填量 | 665.7±81.1 | 625.5±70.8 |
RP・RAP量 | 332.2±125.6 | |
最終初期充填量 | 292.4±113.9 | |
最大値 | 855 | 558 |
最小値 | 525 | 47 |
血液希釈の状況を確認するヘマトクリット値の推移を示します。体外循環開始直後の最も希釈される部分で希釈の影響を最小限に軽減しています。
水分バランスは両群に有意差はありませんが体外循環中(ECC)の水分バランスは適正に保たれています。