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C.疼痛(3) 神経障害性疼痛

ページの目次


Overview

比較的高頻度に脊髄浸潤(麻痺症状)の前駆症状であることがありますので注意してください。
一般的に神経障害性疼痛は難治性で治療の有効率は低いですが、以下の選択肢があります。
治療のプロトコールは確立したものはありませんので、副作用プロフィールから選択してください。鎮痛補助薬の効果の差は大きくないと考えられています。

神経障害性疼痛の鎮痛治療のoverview



治療オプション

抗痙攣薬

ガバペンとリリカは国際的に標準的な治療薬で(NNT=4程度)、他の補助薬に比較して抗コリン性の副作用が少なく、眠気が生じることがありますが使いやすい薬剤です。リリカはガバペンと同じ作用を有していますが、生体内利用率が改善され線形の薬物動態を示し、用量調節がしやすくなっています。また内服数が少なくなります。ガバペンはてんかんの保険適応しかありませんが、リリカは神経障害性疼痛で保険適応があります。
効果の幅はいずれも大きくはありません。癌疼痛ではほとんど知見はありませんが、リリカより眠気の少ないミロガバリン(タリージェ®)が2019年より販売されています。

ガバペンの効果を検証したイタリアでのRCTでは、開始して初めの5日ほどはガバペンを加えたほうが有効な患者が多いようにみえましたが、後半ではあまり変わらなかったことが示されています。



処方例
リリカ25~50mg眠前から開始。
眠気やふらつきないこと確認して1~2日毎に50~150mgずつ、150~300mg分2まで漸増。眠前を50→75→100mgと増量した後、朝に25→50mg追加のように、夜にかためて増量していくと比較的増量しやすいです。
ガバペン200mg眠前から開始。
眠気やふらつきないこと確認して、1~3日毎に200~400mgずつ、400mg分2~600mg分3…と1200~1800mg分3~4まで漸増。

TCAs(三環系抗うつ薬)

トリプタノール10mgで開始、25~50mgへ漸増が最も標準的(NNT=3程度)の鎮痛補助薬ですが、全身状態が不良/高齢者では、せん妄、眠気、便秘などの抗コリン性副作用を生じることが多くなります。欧米ではノリトレン(当院不採用)、国内ではアモキサン10~50mgも用いられています。


SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)

サインバルタ20~60mgが化学療法による神経障害性疼痛に対して有効なことがRCTで確認されています。
対象となった症状は、痛みを伴った「しびれ痛さ」であり、「痛くはないがジンジンしているのが(感覚がわからなくて)困る」や、「痛みやジンジンはないが、動かしにくくてボタンを入れるとか細かいことがしにくいので困る」といった症状を調べたものではありません。また、サインバルタが有効だったのは、プラチナ製剤を使っていた患者さんが多く、ドセタキセルを使っていた患者さんには効果がなかったということが分かりました。このことから、サインバルタが有効な患者さんは、主にプラチナ製剤による神経障害性疼痛と考えておいた方がいいようです。
副作用で吐き気が出ることがあります。



他に、テグレトール100mgで開始、200~400mgへ漸増も標準的(NNT=3程度)ですが、がん患者では眠気、ふらつきを生じることが多く、致命的なアレルギー反応や血球減少を引き起こすことがあります。
国内ではリボトリール0.5~1mgがしばしば使われます。数日後に蓄積性の眠気を生じることがありますが、大きな副作用はなく、不眠がある場合には使用しやすい治療薬です。

抗不整脈薬

メキシチール200~400mgが糖尿病性神経障害に適応が通っていますがNNTは高く、効果は少ないと考えられています。消化器症状のリスクがありますが、精神作用が少ないのでせん妄がハイリスクの場合には選択されることがしばしばあります。
内服できないときに、国内ではキシロカイン200~1,000mg/日 持続点注/皮下注がよく用いられますが、実証レベルは乏しい方法です。まれにキシロカイン中毒を起こしますので、血中濃度のモニタリングが必要です。
タンボコールは30%に有効なPhaseII研究がありますが、致命的な不整脈を生じる可能性があるので、一般的には使いません。


NMDA(N-methyl-D-aspartate)拮抗薬

ケタミン10~200mg/日 持続静注/皮下注が経口できない患者の強い神経障害性疼痛に使用され、有効率は40~60%です。軽度のものを含めて30~50%の精神症状を生じます。
*近年オーストラリアで行われたRCTでは、プラセボと比較して有意な鎮痛効果の差はありませんでした。一度投与するのは良いと思いますが、効果の評価は厳しく行い、効果がはっきりしないようなら中止する方向に考えたほうが良いと思われます。



内服可能な患者に対しては、経口ケタミン20~100mgが用いられ、院内製剤で外来・入院ともに処方可能です(緩和ケアチームに依頼してください。)
国内では、セロクラール6T/日がNMDA拮抗作用を持ち、ほとんど副作用を認めない薬剤として使われますが、根拠レベルは低いです。

筋弛緩薬

筋骨格の緊張による疼痛には、リオレサール1.5Tで開始して、3~4T/日 増量すると良い場合があります


鎮痛補助薬のNNT/NNH

NNTとは、「Number needed to treat」の略で、「一人に治療効果を得るために何人を治療する必要があるかを示す指数」で、少ないほうがより有効な薬剤となります。逆にNNHは、何人に投与したら1名の合併症を生じるかを示す指標」なので、大きいほうが安全な薬剤になります。非がんの神経障害性疼痛で作成されているNNT、NNHの一覧表を示しました。左の図では、左上にいくほど「安全で有効な薬」、「右下に行くほど効果がなく副作用の多い薬」となります。ガバペンチン誘導体のNNTは6、NNHは16くらいで、三環系抗うつ薬(TCA)は同等の副作用でより効果があり、リドカインパッチは同等の効果でより副作用が少ないことがわかります。右の図は、痛みの原因となった病態ごとに分析したものですが、これをみると、しかし、痛みの原因はほとんどが糖尿病性神経障害や帯状疱疹後疼痛で、がんによる神経障害性疼痛はほとんど実証研究がないことがわかります。