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B. 疼痛(2)-2 突発的な痛み フェンタニル粘膜吸収製剤

フェンタニル粘膜吸収製剤

 国内では頬粘膜吸収錠(イーフェンバッカル)、舌下錠(アブストラル)が発売されています。当院ではアブストラルが採用になりました。


 突出痛には①薬の切れ際の痛み(定期的な鎮痛薬の少し前に痛くなるもの)②体動に伴う疼痛③予測できない突発的な疼痛、の3種類がありますが、フェンタニル粘膜吸収製剤は②と③に対して使用します。がん患者の予測できない突発的な疼痛は、発生が急で、持続時間が短く、数十分のうちに自然に軽減することが特徴です。フェンタニル粘膜吸収製剤は、経口オピオイドに比べ効果発現時間がはやく、効果持続時間が短いので、このような突出痛の特徴に合った薬剤と考えられています。したがって、単に経口投与できない場合の代替薬というわけではありません。また、突出痛の治療に必要なオピオイドの量は、ベースのオピオイド量とは相関がないことが分かっています。(ベースのオピオイドが多くても、突出痛治療に必要な量は少ない場合、またはその逆がある。)このため、突出痛は突出痛として分けて、至適投与量を決定する必要があります。

参考 至適投与量と1日オピオイド投与量の関係

図1は、アブストラルの国内第Ⅲ層臨床試験における、定期的なオピオイド投与量と、突出痛に対するアブストラルの至適投与量との関係を示したものです。これを見ると効果があったレスキュー量と定期的なオピオイドの投与量とは完全には比例しないことがよくわかります。つまり、1日使用しているオピオイド量が少ない患者でも突出痛の緩和のために大量のオピオイドを必要とすることもあり、その逆に、1日使用しているオピオイド量が多い患者でも少ないオピオイドで突出痛に対応できる場合があります。そのため、フェンタニル粘膜吸収製剤の使用では、投与初期の「用量決定期間」を設けることが必要とされています。



一方、ある程度の投与量の「目安」になるものは、図2のイーフェンの至適投与量とオキノームの至適投与量の関連図です。イーフェンとアブストラルは1:1換算ではありませんが、突出痛の治療に使用される場合、イーフェン200μg≒オキノーム15㎎、が目安になります。



アブストラル タイトレーション・プロトコール

医学的適応

1 モルヒネ60㎎、オキシコドン40㎎、フェントス2㎎、デュロテップMT4.2㎎以上
(注)オピオイドの定期投与を行っていない患者では使用しない。これより低用量の場合(フェントス1㎎など)の場合は「必要性を慎重に検討する」とされている
2 持続痛がコントロールされている。すなわち、一日のうち大半は痛くなく、1日に2~3回以下の突出痛がある。
(注)1日4回を超える突出痛がある場合には、持続痛がコントロールされていないと考えられるので、アブストラルを使用する前にベースの鎮痛薬を増量する。
3 既存のオピオイド速放製剤(オプソ、オキノーム、アンペック坐薬)でコントロールできないまたは、副作用が強く使用できない
 (注)単に経口の投与経路がない場合にアンペック坐薬の代わりとして使用する薬剤ではない


概要

 至適投与量は1日の合計オピオイド投与量から決定することはできないため、「用量決定期間」をもうけてプロトコールにしたがって至適投与量を決定してください。
至適投与量を決定するためには、突出痛を生じたときに、100ugから投与を開始し、2回続けて効果があった場合にその投与量を至適投与量とします。効果ない場合は、100ug→200 ug→300 ug→400 ugの順に増量し、効果を判定します(保険適応は800μgまでですが、当院では当面400μgまでとしています)。それ以上必要な場合は患者限定として200µg製剤を導入するか検討中です。
したがって、特に高用量を使用している患者では、至適投与量を決定するまでに数日を要することがあります。至適投与量が決まらない患者も10~30%ほど存在します。


用量決定期間

フローチャート参照。100ugから開始します。アブストラル 医師指示の出し方を使用して、指示を出してください


アブストラルの処方はフォルダ管理となります。(3文字検索はできません)
「オーダ」→「病院」→「処方オーダ」フォルダに006:アブストラル、があります。
この中に「アブストラル 用量決定用」、「アブストラル 至適投与量決定後」の2つがあります。
「アブストラル 用量決定用」をオーダーすると、用量決定期間の指示内容が用法に反映されます。

■アブストラル 用量決定用
 例)アブストラル舌下錠100μg 1錠
   疼痛時 5回分
   30分後効果ない時1回のみ追加可。1回目から数えて4時間あけて1日4回まで可

*必ず100ug/回から始めてください。
指示は、アブストラル用量決定期間 指示例を使用してください。効果を判定して、増量する必要があれば増量の指示例を利用してください。


至適投与量決定後

至適投与量決定後は、至適投与量決定後の指示例を利用してください。
フォルダから「アブストラル 至適投与量決定後」をオーダーすると、至適投与量決定後の指示内容が用法の内容に反映されます。

■アブストラル 至適投与量決定後
例) アブストラル舌下錠100μg 1錠  
   疼痛時 5回分
   4時間あけて1日4回まで可


タイトレーション フローチャート