10月 脳動脈瘤に対する新しい血管内治療(フローダイバーター治療)
【特集】脳動脈瘤に対する新しい血管内治療(フローダイバーター治療)
脳動脈瘤とは、頭の中の血管が薄くなったり弱くなったりすることで、脳の動脈のある部分に「こぶ」ができる病気です。 |
くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤は150人に1人ほど見られると言われており、MRI検査などで見つかる機会が増えてきています。大きさや形にもよりますが、年間1%前後で破裂を起こし発症します。また、部位によっては視力を司る視神経や目を動かす神経(動眼神経、外転神経)を圧迫して視力障害を生じたり、ものが二重に見えたりする複視と呼ばれる症状で発症する大型の脳動脈瘤もまれに見られます。
そのような場合には現行の開頭クリッピング術(頭蓋骨の一部を取り外して脳動脈瘤にクリップをかけて血流を遮断する方法【図1】)や、カテーテルによる血管内コイル塞栓術(カテーテルという細い管を足の付け根から挿入し、脳動脈瘤にコイルを詰めて破裂しないようにする方法【図2】)では手術が大がかりになってしまい、破裂を防ぐことはできても、逆に目の症状が悪化することもありました。また、足や手の血管を使用したバイパス術(血流が悪くなった脳の血管に他の血管をつなげて血流をよくする手術)なども可能とされていましたが、一般的な施設では難しい場合も多く、身体にかかる負担も大きいものでした。
そこで、当院ではこのたび新しい血管内治療器機であるフローダイバーター(Flow diverter)を導入し、以前は治療の難しかった症例にも身体への負担が少ない治療が可能になりました。フローダイバーターは、通常の頭蓋内動脈瘤ステントよりもメッシュの細かな筒型の治療器機で、動脈瘤に直接触れることなく、血管にステントを置く方法です。これにより動脈瘤の中の血流が少なくなり、血液の通り道をふさぐことで新しい血管の壁ができ、動脈瘤そのものを小さくする新しいタイプの治療です。血管を傷つけることがなく、また動脈瘤の中に金属を入れないため、手術中に動脈瘤が破裂する危険性が低くなります【図3】。
現在、どの動脈瘤にも適応となるわけではなく、すぐに破裂予防効果がある治療ではないため、動脈瘤の大きさや部位、分岐している血管の有無などにより向き不向きがある治療ですが、非常に効果の高い治療法でもあり、今後さらに拡充していくと考えられています。MRI検査などで比較的大きな動脈瘤を指摘された方は、当科までご相談ください。
文責:脳神経外科 主任医長 林 正孝
文責:脳神経外科 主任医長 林 正孝