5月 小さな傷で大きな安心を ~弁膜症に対する低侵襲心臓手術~/心臓血管外科

2026.05.01

【特集】 小さな傷で大きな安心を ~弁膜症に対する低侵襲心臓手術~

  • 心臓弁膜症とは
 心臓弁膜症とは、心臓内にある弁(大動脈弁・僧帽弁など)の開閉に異常が生じ、血液の流れが妨げられる病気です。弁が硬く狭くなる「狭窄症」と、弁がうまく閉じず血液が逆流する「閉鎖不全症」に大別されます。進行すると、息切れや胸苦しさ、むくみ、失神などの症状が出現し、心不全へと進展し、命に関わることもあります。

治療は、症状や重症度に応じて薬物療法や外科治療やカテーテル治療が選択されますが、根本的な治療は外科手術による弁の修復や置換です。従来は大きく開ける手術が一般的でしたが、今は体への負担を減らす方法が増えています。小さな傷で行う低侵襲心臓手術(MICS:ミックス)や、血管からカテーテルを入れて行う方法(TAVI:タビ)などがあり、痛みや回復の面で患者さんに優しい治療が選べるようになっています。
MICSのメリット
  1. 切開が小さく、身体の負担が少ない
  2. 出血量が比較的少ない
  3. 創部が目立ちにくく、美容面も良い
  4. 術後の疼痛も少ないため、社会復帰が早い
  • より低侵襲の手術法“TAVI”
 高齢の方や開胸手術のリスクが高い患者さんには、カテーテル(細い管)で人工弁を留置する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI:Transcatheter Aortic Valve Implantation)が有効です。足の付け根などからカテーテルを挿入し、心臓まで進めて人工弁を留置するため、開胸手術を行わずに治療が可能です。身体への負担が少なく、回復が早い点が大きな利点です。
  • 心臓や血管の病気が気になる方へ
 このように、弁膜症治療は大きく進歩しており、患者さん一人ひとりの状態に応じて最適な治療法を選択することが重要です。当院では、心臓外科医、循環器内科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士、理学療法士などからなるハートチームを構成し、多職種が連携して最適かつ安全性の高い治療の提供に努めています。

 また、いずれの病気にも共通して言えることですが、早期発見と適切な治療により、治療後の生活の質や予後の改善が期待できます。気になる症状がある場合や健康診断で異常を指摘された場合には、当院で開設している「弁膜症・心ざつおん外来」までお気軽にご相談ください。

【部門クローズアップ】 心臓血管外科

専門性とやさしさの両立を目指して

 当科では、成人の心臓および血管疾患全般に対する外科治療を行っています。狭心症や心筋梗塞に対する冠動脈バイパス術、大動脈瘤や大動脈解離に対する人工血管置換術やステントグラフト治療といった命に関わる疾患から、下肢静脈瘤や透析患者さんに対するシャント造設まで、幅広い治療に対応しています。なかでも、大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症といった弁膜症の治療に力を入れています。特に、体への負担を軽減する低侵襲心臓手術(MICS)を積極的に導入しており、従来の開胸手術と比較して出血や痛みが少なく、回復が早いことが特徴です。これにより、入院期間の短縮や早期の社会復帰が期待でき、患者さんの身体的・社会的負担は軽減します。

 さらに、専門外来として「弁膜症・心ざつおん外来」および「血管外科外来」を設けており、健康診断などで心雑音などの異常を指摘された方や、下肢静脈瘤が気になる方も安心してご相談いただけます。

 当科では、今後も最新の医療技術を取り入れ、安全で効果的な治療を提供するとともに、患者さんが安心して治療を受けていただけるよう努めてまいります。
文責:心臓血管外科 兼 血管外科 部長 浅野 満(あさの みつる)

【シゴト図鑑EX】 特定看護師

手術直後の患者さんに寄り添う看護師

 当院の院内ICUはベッド数8床の小さな病棟ですが、院内においてとても大きな役割をもっています。一つ目は、開胸や開腹を伴う大手術を受けられた患者さんの手術直後の全身状態管理です。手術が終わり、麻酔から目覚めた後は精神的にも、肉体的にも非常に不安定な状態にあります。看護師は常に患者さんに寄り添い、24時間体制で全身状態の観察を行います。二つ目は、集中治療管理が必要な患者さんの集中治療室にもなります。人工呼吸器や人工心肺、人工透析などの装置や薬剤投与を含め、呼吸や循環の管理ができる高度医療が提供できる設備が整っています。そんな高度医療を支えるスタッフとして、集中治療科医師が常駐しているだけでなく、専門知識を有したクリティカルケア認定看護師、皮膚・排泄認定看護師をはじめ、医師の指示のもと特定の医療行為が行える特定看護師も院内で一番高い比率で所属しています。

 各診療科や看護師、薬剤師、栄養士、臨床工学技師など様々な医療スタッフが連携し、一人ひとりに合わせた最高の医療を提供できるよう務めています。
文責:看護師(特定看護師) 片岡 大輔

No.546(2026年5月号)

みどりの通信5月号[PDF:4.5MB]