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HER2遺伝子の dual ISH

DISH法は、タンパクをターゲットとするIHC法とは異なり、タンパクの設計図となる遺伝子をターゲットとして可視化します。
乳癌の中には、膜タンパクHER2が異常に増加しているHER2陽性乳癌があり、IHC 法によるコンパニオン診断の代表的な疾患群です。
すなわち、IHC法によるHER2強陽性の症例にはHER2阻害薬(トラスツズマブ(ハーセプチン), ペルツズマブ(パージェタ))の投与が可能となり、治療効果を期待できます(図1)。

図1 顕微鏡写真(乳癌)

しかし、HER2 のIHC法による染色性には強弱があり、陽性と陰性の中間の染まり、すなわち境界域と呼ばれる染色性を示す病変があります。染色性が境界域の場合、HER2阻害薬の投与ができません。境界域の病変に対し、HER2阻害薬の有効性を確認するため、DISH法を行います。HER2タンパクのIHC 染色強度は、遺伝子数の増加に相関するので、DISH法を施行し遺伝子数の増加を計測します。計測値がDISH法で陽性の結果であれば、HER2阻害薬の投与が可能となります。

DISH標本上での判定方法は、腫瘍細胞20個に対し、その核内のHER2遺伝子(黒色)のシグナル数と、セントロメアの遺伝子(赤色)のシグナル数を計測し、黒色と赤色のシグナル比を算定します。これを‘’HER2 増幅比‘’と言い、≧2.0が陽性です。また、20個の腫瘍細胞の核内に存在するHER2タンパク遺伝子の黒色シグナルの総数を計測し、腫瘍細胞1個あたりの核内の平均値を出します。これを‘’HER2 遺伝子コピー数の平均‘’と言い、≧4.0が陽性です。

DISH法による陽性症例の報告書とその顕微鏡写真を示します(図2)。

図2 HER2-DISH法の報告書(陽性) と顕微鏡写真

HER2-DISH法の原理

HER2-DISH法は、まずHER2遺伝子と相補的塩基配列を持つ一本鎖(HER2プローブ)とHER2遺伝子を含む17番染色体のセントロメア遺伝子と相補的塩基配列を持つ一本鎖(Chr17プローブ)を設計し、それぞれに、抗原となるハプテンを標識物として結合させます。
ハプテンに対する抗原抗体反応を利用して、IHCと同様に発色させ可視化します。現状では、プローブ設計から作製は専門業者に委託します。
プローブを用いたDISH法による染色はベンチマークULTRAにより、完全自動化されています(図3)。

図3 HER2-DISH法のイメージ図

聖隷横浜病院でのDISH法の実際

当院では、HER2-DISH法を、IHC法を施行する機器と同一のベンチマークULTRAにより実施しています。
近年はHER2阻害薬の適応拡大により、乳癌のみならず胃癌・唾液腺癌にもHER2の検査範囲が広がっています。

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