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疾患と治療方法 ~大腸がんとその治療について~

大腸がんについて

大腸は食べ物の通る消化管の最後の部位であり、約1.5-2mの管腔臓器です。
その主な機能は水分の吸収で、部位による名称があります(図①)。

(図1) 大腸

この大腸(盲腸・結腸・直腸)から発生するがんを大腸がんと言います。大腸がんは欧米においては最も多いがんです。
最近、日本でも食生活が欧米化してきたこともあり、増加の傾向にあります。その症状としては血便、便通異常(下痢、便秘)、腹痛、腹部膨満感、貧血などがあります。
上記症状が長く続く場合、便潜血検査もしくは大腸内視鏡検査を行うことが望ましいです。がんが確認された場合でも元気な方が多く、症状では分からないことが多いです。



大腸がん(盲腸がん・結腸がん・直腸がん)は、胃がんや乳がんなどとともに、現在、本邦で罹患率の高いがんの一つです。がんでの死亡者数において、女性で1位、男性で3位となっています(2017年報告 図②)。
過去50年間でおよそ10倍となり、現在でも増加傾向です。早期の段階で治療できれば高い確率で治癒できるがんであり,症状がなくても大腸がん検診を受診することは重要です。

大腸がんと診断された場合、病状はどの程度まで広がっているのかについて評価します。これをステージ(進行度)と言います。

大腸の内側(粘膜)で発生したがんが大腸壁に浸潤している深さ(深達度)、病変周囲のリンパ節への転移があるか(リンパ節転移)や遠くの臓器への転移(遠隔転移)について 画像検査を元に評価し、ステージを決定します(図③)。
このステージに基づき、治療方針が決定します。

大腸がんの治療は, ステージや部位により

(1) 消化器内科での大腸カメラを用いた内視鏡手術、
(2) 当科での全身麻酔下の手術(腹腔鏡下手術、開腹手術)
(3) 化学療法(抗がん剤など)

を症例に応じて行っております。(2)は、がんを含む腸管をリンパ節ともに切除しつなぎます。
病変により切除する範囲が決まります。

検診で診断された大腸がんだけでなく、腸閉塞で緊急入院する大腸がんの方も少なくありません。
がんの穿孔による腹膜炎などの重症な症例でも、集中ケア病棟スタッフなどとの連携により適切に対応しています。

腹腔鏡下大腸切除術について

小さな傷で施行する腹腔鏡手術は、身体に対し低侵襲であることから、適応を慎重に判断した上で施行しています。
腫瘍の根治性、安全性、年齢、全身状態、過去の開腹手術歴などを基にカンファレンスで検討します。
根治性や安全性が損なわれると判断した場合は、従来の大きさの切開創による確実な手術(開腹手術)を心掛けております。
治療方針は、原則的に「大腸癌治療ガイドライン」(大腸癌研究会 編)に則ります。

(図4)大腸癌研究会HPより抜粋

炭酸ガスで腹部を膨らませ、腹壁に数ヵ所小さな穴を開けて、腹腔鏡と電気メスや超音波凝固切開装置などを挿入し、モニター画像を見ながら癌とリンパ節を含む大腸を切除します。

開腹手術(従来の切開創の大きさでの手術)では、腹壁を大きく切開(15~25cmほど)し、腹腔内(おなかの中)を直接見て手を入れて手術を行いますが、腹腔鏡手術では4~6cmの傷1か所、5mmの傷3か所、12mmの傷が1か所で手術を行います。術後の傷ができるだけ縮小するように修復します。

(腹腔鏡手術創)

(開腹手術創)

腹腔鏡手術の特徴

体のダメージが少なく整容性が保たれ、術後約10~14日での退院、早期の社会復帰を目標とします。
さらに、腹腔鏡による拡大視効果があり、より繊細丁寧な手術が可能です。モニター画像をチーム全員で見ながら手術を行います。

小さい傷と術中の出血量が少ないことで低侵襲であり、患者さんの身体的負担の軽減も長所です。また国内の他施設においては、開腹手術と比べて術後合併症などの短期成績が 優れていることが報告されています。
がんが生じた臓器や周囲のリンパ節を切除する範囲は従来の開腹手術でも腹腔鏡下手術でも同じであり、術後の在院日数が通常の開腹手術と変わらないこともあります。

現在は大腸がんの術式のほとんどが腹腔鏡下手術でも保険適応となっています。腹腔鏡下、開腹下それぞれの長所、短所を説明し御理解して頂きます。その上で、術式を選択いたします。

高齢化社会を迎え、様々な疾患を抱える患者様に対し、手術侵襲を少しでも減らすことは重要だと考えております。
安全性、根治性が損なわれないよう、腹腔鏡下手術の長所を十分に生かして行っております。

直腸がん・人工肛門について

大腸は直腸と結腸とに大別されます。
直腸がんは、人工肛門との関連がある疾患ですが、治療技術の向上と集学的治療により、自然肛門(生来の肛門)に近いがんでも温存する術式が多くなり、永久人工肛門となる方は少なくなってきております。
がんの部位や進行の程度により、人工肛門を造設したり、神経障害による排便、排尿、生殖機能の障害といった合併症が生じることもあります。
がんの根治が基本であり、人工肛門や神経障害を回避したために、再発の危険が残る手術を施行することは望ましくありません。
当院でも適応を十分に検討して、自然肛門を温存する目的に一時的人工肛門(4~12か月間、小腸を用いた右下腹部への人工肛門)を造設し、二回目の手術で人工肛門を閉鎖する二期的手術に取り組んでいます。

人工肛門の管理については、専門の認定看護師によるストーマ外来を行っており、術後や退院後のストーマの管理のお手伝いをしております。

年齢や社会的要因(ご職業など)を考慮して必ずしも肛門温存を推奨しないこともあります。術後生活の質が低下しないよう多くの患者様が安心して生活できるように取り組んでいます。

大腸周囲には消化管以外の臓器も存在し、場合により子宮付属器といった婦人科領域の治療、あるいは膀胱、尿管といった泌尿器科領域の治療が必要となることがあります。

当院に該当科が無い疾患の場合は、近隣の専門科と協議し、治療方針や術式を検討しております。

化学療法(抗がん剤)について

大腸がんの抗がん剤治療は、手術後に再発率低下のために行う補助化学療法と切除不能・再発大腸がんに対して行う化学療法があります。

近年、大腸がんの抗がん剤はその種類、投与方法の組み合わせが増えており、飛躍的に成績が向上しております。有効な抗がん剤が多く、特に手術後に広く使用しています。

進行して切除困難な大腸がんについては、手術の前に抗がん剤を投与することでがんが小さくなり切除が可能となることや、再発大腸がんに対しても抗がん剤の効果で縮小し、病変の切除が可能となることもあります。

大腸がんの抗がん剤は内服や点滴の数種類を組み合わせて行い、そのほとんどが外来通院で可能であり、通常2~3週毎の通院治療を行います。当院では大腸癌治療ガイドラインに記載されているほとんどの抗がん剤治療が可能です。

読売新聞に掲載されました「病院の実力 神奈川編147 大腸がん 2020年8月23日(日) 発刊」

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連載特集『病院の実力』(今月のテーマ:大腸がん)において、医療機関別2019年治療実績に聖隷横浜病院が紹介されました。

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