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放射線治療科

診療科責任者

放射線治療科部長 山田和成

放射線治療科部長
山田和成

緩和放射線科部長 山本昌市

緩和放射線科部長
山本昌市

概要または責任者から一言

当院では1980年より放射線治療を開始しておりましたが、地域がん診療拠点病院指定に伴い放射線治療充実のため、2006年4月新治療設備導入、放射線治療専門医を配置し、独立診療科として開設いたしました。
言うまでもなく、日本人の死因のトップは癌であり、高齢化に伴い罹患率、死亡率ともに上昇を続けています。癌は体中のどの組織からでも生じます。また統計では一生のうち、ふたりにひとりは癌に罹患します。すなわち癌は誰もが罹患する、最も多い病気であるといえます。

癌の主たる治療法は手術、放射線治療、化学療法(抗癌剤)の三つであり、放射線治療はその一翼を担っています。米国では癌患者のおよそ半数が放射線治療を受けていますが、日本では専門医・技師・物理士などの育成の少なさもあり、普及が遅れていました。放射線治療の特徴は、手術と同じ局所療法でありながら、臓器の形態や機能を温存でき、全身療法である化学療法と異なり、病巣以外への影響が少なく比較的低侵襲の治療が可能なことです。「身体に優しい治療法」「切らずに治す治療法」として高齢者にも広く適応されます。近年のコンピューター技術の急速な発達に伴い、放射線治療も一昔前とは様変わりしました。

当科は他のがん診療科と連携し、治癒可能な病期ではより治癒後の生活の質(QOL)が高い治療を、治癒不能な病期では身体に負担なく症状の緩和が得られるように、国際的な標準治療としての放射線治療の普及に努めています。さらに定位放射線治療(SRS/SRT)、強度変調放射線治療(IMRT)に代表される高精度治療の導入に努めています。
2010年1月に放射線治療棟が完成し、2010年5月より高精度放射線治療機Novalis Txが稼動しています。
2017年には骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌におけるアルファ線放出放射線医薬品塩化ラジウム(Ra223)注射薬(ゾーフィゴ静注)の診療を開始しました。

1号機であるバリアン社製Clinac 21EXが2006年5月に稼働してより12年となったため、がん診療連携拠点病院に対する静岡県平成29年度がん医療均てん化補助金交付を受け、2018年に新規治療機に更新となりました。新治療機はエレクタ社製放射線治療機の最新旗艦機種であるVersaHDです。VersaHDではTruebeamを備え、最新の高精度治療に対応しています。これにより当院で行う全ての放射線治療が高精度化となりました。

機器を扱うスタッフ(医師・医学物理士・技師・看護師)のさらなる修練・研修を進め、より安全により精密に、地域に国際標準がん医療ならびに先進医療を提供していきます。

新治療機VersaHD導入について

2018年10月よりエレクタ社製放射線治療機旗艦機種であるVersaHDが稼働いたしました。VersaHDは超高線量率ビームであるTrueビームを備え, 40cm5mmMLC (Agility), 高精度6軸寝台HexaPod, 体表光学トラッキングシステムCatalyst, 呼吸波形検出システムであるAbchesと組み合わせた4D-CBCTシステムを備えています。

VersaHDの特徴

4D-CBCT(四次元コーンビームCT)





呼吸運動のある臓器では, 病変に集中した照射野を正確に照射することが難しくなります。4D-CBCTでは内臓器の動きまでリアルタイムに観察し, ビームの再現性を高めます。

Surface IGRTシステム(体表面光学トラッキングシステム):Catalyst (C-RAD社製)


患者体表画像を用いて画像誘導放射線治療を行います。可視光を用いて体表面画像を画像化しますので不必要な被曝がなく, 簡便に何度でも行うことができます。取得された画像を基準画像と比較し、位置補正を行います。主に標的が体表面に近い乳房照射など、また呼吸同期・停止システム、照射中のモニタリングの一環として用いられます。

新治療機Novalis Tx導入について

新治療機Novalis Tx

2010年5月末より新設された放射線治療棟へ移転し、放射線治療装置2号機として国内5機目、静岡県初となる最新高精度放射線治療機Novalis Tx(ノバリスTx)を導入しました。

Novalis Txは汎用リニアック(米国・バリアン社 Trilogy)に脳外科手術ナビゲーションシステムを主に開発しているドイツ・ブレインラボ社の高精度画像誘導システムと微細なビーム射出部開口部しぼり(マイクロマルチリーフ)を統合した最新型の放射線治療機です。

特徴:通常の単純照射から最先端高精度放射線治療までなんでもできる。

このNovalis TxのX線ビームを射出する開口部絞り(マルチリーフ)は2.5mmきざみで微小なものから40cmの広範囲までをカバーします。刻々と変化する人間の身体の動きに対応するため、3種類の画像誘導装置を備え、治療寝台上で体表の動きを赤外線で、骨格の動きをX線透視画像で、内部臓器の動きをCT横断像で把握し、コンピューター計画時との誤差を0.1mmの精度で位置座標を算出。算出したずれをロボット寝台が毎回、自動的に補正し精密な治療を実現します。また呼吸運動のリズムにあわせビーム発射を行う呼吸同期機能も備えています。従来機では頭部の定位放射線治療(ラジオサージェリー・ピンポイント照射)で1mm以内の誤差を確保するためには頭蓋骨のピン固定が必要でしたが、新型機では不要となりました。
治療計画コンピューターも最新バージョンに更新され、頭部のみならず全身の腫瘍に対し高精度放射線治療(定位放射線治療、強度変調放射線治療:IMRT(回転IMRT RapidArcを含む)、画像誘導放射線治療:IGRT)が可能となります。
高価な高精度医療機器もコンピューター同様、使いこなせなければただの箱です。保守管理が複雑な分、事故のリスクがあがりむしろ有害ともいえます。また腫瘍ごとに異なる自然史を理解せず、やみくもに画像に描出される領域のみ照射するだけでは、まともながん治療とはいえません。専門医とともに医学物理士、放射線治療品質管理士を配置、スタッフも増員し、より安全な体制の構築に努めてまいります。

Novalis Tx の特徴

2.5mm マイクロマルチリーフ HD120mMLC

2.5mm マイクロマルチリーフ HD120mMLC

ビーム射出口のしぼりは2.5mm刻みで微細照射野から22 x 40cmの大照射野までほぼ全ての治療状況を可能とします。

(中央8cmが2.5mm幅。上下7cmが5mm幅合計120枚のリーフが微小な精密照射野から大照射野までをカバーする)

画像誘導(IGRT)機能

On-Board Imaging 装置(OBI)

On-Board Imaging 装置(OBI)
OBIは治療機側面に連結したX線透視装置で、治療寝台上で放射線照射を受ける状態での治療位置照合を可能とします。また、回転撮影することにより寝台上で治療直前のCT画像(CBCT:cone-beam CT)も取得できます。これによりX線透視では見えない軟部臓器や腫瘍病巣の動きを詳細に観察することが可能になり、治療の精度をさらに高めることができます。

CBCT画像の例(前立腺)

CBCT画像の例(前立腺)
治療計画時との画像と治療寝台上でのずれをCT画像で確認
内部臓器や腫瘍の動き調節することが可能 精度1mm

ExacTrac X-Ray/Robotic 6D couch

ExacTrac X-Ray/Robotic 6D couch

治療機本体とは独立して、天井、床に固定・埋設した赤外線カメラと2方向からのX線撮影の2つの位置決め機構により、体表および骨格のコンピューター計画時と位置ずれ量を正確に算出します。誤差の算出精度は0.1mm。そして、位置ずれ量に応じて、ロボット寝台が自動的に移動して修正します。
このシステムにより、自動かつ高精度に位置補正が行え、治療時間も短くできます。

Eclipse Ver. 13.6(バリアン社)/ iPlan Ver. 4.5.5(ブレインラボ社)

回転IMRT(Rapid Arc)

回転IMRT(Rapid Arc)計画も可能
中咽頭癌例 左右の唾液腺を守るIMRT
通常IMRTよりさらに分布が改善

放射線治療科概要

2020年度2021年度2022年度
新規患者数(新患人数)275284251
183187157
929794
放射線治療患者実人数(新患+再患)358377361
年間延べ治療人数6,5686,1705,842
延べ治療件数(部位数)7,1366,4476,222
延べ治療門数19,38819,14116,604

新規患者疾患内容

2020年度2021年度2022年度
脳腫瘍345
頭頚部腫瘍533
肺・縦隔989788
  うち肺癌939287
乳癌454239
消化器系314036
  食道癌977
  胃・腸111714
  肝胆膵151615
泌尿器系716658
  前立腺癌585247
  膀胱癌8127
  腎癌513
婦人科癌031
血液リンパ91212
  悪性リンパ腫81112
  骨髄腫000
その他9159

新規患者内容

年度2020年度2021年度2022年度
根治照射197193155
緩和照射789196
  脳転移545974
  骨転移585962
特殊放射線治療 
  肺定位照射232621
  体幹部定位照射(肺以外)657
  頭部定位照射284263
  前立腺I-125433
  Sr-89内用療法000
  Ra-223000
  強度変調放射線治療(IMRT)123113120

スタッフ

氏名職位卒年専門領域・認定医・専門医
山田 和成
やまだ かずなり
部長1991年日本医学放射線学会認定指導者
日本医学放射線学会/日本専門医機構放射線専門医
日本放射線腫瘍学会認定医
日本乳癌学会乳腺専門医
日本がん治療認定医機構による暫定教育医
日本がん治療認定医機構によるがん治療認定医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本食道学会食道科認定医
臨床研修指導医講習会修了
がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
山本 昌市
やまもと しよういち
部長1992年日本医学放射線学会認定専門医/指導者
日本放射線腫瘍学会認定医
日本がん治療認定医機構による暫定教育医
がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修会修了
臨床研修指導医養成講習会修了
臨床研修プログラム責任者養成講習会修了

2017年12月15日現在

医師以外のスタッフ

・放射線治療専任技師9名
  うち医学物理士 1名
   放射線治療品質管理士 1名
   日本放射線治療専門放射線技師認定者1名
  放射線治療併任看護師7名
   うち放射線療法認定看護師 1名

放射線治療科特殊医療機器

放射線治療装置

1号機 VersaHD (エレクタ社製)

1号機 VersaHD (エレクタ社製)

2号機 Novalis Tx (バリアン社・ブレインラボ社)

2号機 Novalis Tx(バリアン社・ブレインラボ社)

治療計画コンピューター

Eclipse Ver. 13.6(バリアン社)
iPlan Ver. 4.5.5(ブレインラボ社)
Monaco Ver.6.12(エレクタ社)

放射線治療専用CT

放射線治療専用CT

Aquilion Exceed LB(キャノン社)

CTシミュレータは、治療計画(どのように放射線を照射するか)を行うシステムです。体内にある病変と正常臓器情報を取得し、正常組織を避けながら腫瘍に集中して照射できるより最適な手法を患者個々に検討します。また、腫瘍の動きを加味した「4次元CT」の 撮影が可能となり、肺や上腹部のように呼吸により大きく動く部位で、腫瘍や正常臓器の動きを考慮した治療計画を行うことができます。

前立腺癌密封小線源永久挿入治療装置

VariSeed Ver.8.0 (ユーロメディック社)
早期前立腺癌に対し小さなヨウ素(I-125)の棒状線源を会陰部から埋め込むことによって、低侵襲で障害の少ない根治治療が可能となりました。経直腸超音波誘導下に前立腺内に放射線ヨウ素の入ったチタンカプセルを60-100個埋め込みます。カプセルから非常に弱いエネルギーの放射線が前立腺近傍のみにゆっくりと放出され、癌を治療します。周囲への被爆もなく、通常3泊4日入院での治療となります。

前立腺癌密封小線源永久挿入治療装置

有痛性多発骨転移に対する非密封小線源治療

塩化ストロンチウム-89(メタストロン注)
2008年2月6日付で当院は静岡県初となる新核種ストロンチウム-89(Sr89)の使用認可がおりました。ストロンチウム-89は有痛性骨転移を有する癌患者の疼痛緩和を目的として開発された治療用放射線医薬品です。本薬は標準的鎮痛薬では除痛が不十分で、外部放射線治療が適応困難な多発性骨転移の骨性疼痛の緩和に適しています。
ストロンチウム-89という物質からはベーター線という弱い放射線が周囲に放出されます。放出されるベーター線は平均3ミリほどの範囲までしか届きません。ストロンチウムは骨の成分であるカルシウムと性質が似ているため注射されると骨に運ばれ、がんにより代謝が活発となった骨転移部位に長くとどまり、転移部位のみに放射線があたることによって痛みがやわらぐと考えられています。

骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌におけるアルファ線放出放射線医薬品 塩化ラジウム(223Ra)注射薬 (ゾーフィゴ静注)

2017年4月より当院でラジウム注射薬(ゾーフィゴ静注)の使用認可が下りました。
ゾーフィゴ静注は日本初のアルファ線放出放射線医薬品です。骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌患者において、全生存期間を延長する効果があります。また病的骨折などが生じるまでの期間を延長しました。
放射性物質のラジウム-223が、代謝が活発になっている骨の転移巣に集まります。ラジウム-223から放出するアルファ線の力によって、癌細胞のDNA二重鎖を強力に切断し、骨に転移した癌細胞の増殖を抑えます。放出されるアルファ線は100μm未満しか飛びませんので正常組織への影響は限定的です。
ゾーフィゴ静注は4週間毎に1回、静脈注射します。最大6回の注射を受けたら、ゾーフィゴ静注による治療は終了です。

学会認定等

  • 日本放射線腫瘍学会認定協力施設
  • 日本医学放射線学会専門医修練機関

用語解説

下記の添付ファイルにて用語解説をご覧いただけます。

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