グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



診療科・部門


ホーム  > 診療科・部門  > 診療科  > 耳鼻咽喉科  > 難聴の治療について

難聴の治療について

難聴の治療についてのご案内です。


当科で特に力を入れているのは、難聴に対する治療です。
難聴を生じる耳疾患の内で、鼓膜穿孔、耳漏、耳閉感などを伴う中耳の病気で、手術治療により耳症状の改善が望める患者さんの術前・術後の診察です。部長の松井は、鼓室形成術・アブミ骨手術は計3,000件以上の豊富な経験があり、当科が最も得意とする疾患です。

具体的な病名と症状

  1. 中心穿孔性慢性中耳炎 急性中耳炎や鼓膜外傷などにより鼓膜が穿孔して、難聴・耳漏を生じます。
  2. 真珠腫性中耳炎 鼓膜の一部が陥凹して、徐々に周囲の骨組織を融解して、難聴、悪臭のある耳漏を生じ、放置するとめまい・顔面神経麻痺・髄膜炎を起こす可能性があります。
  3. 耳硬化症 徐々に難聴が悪化する鼓膜正常な疾患。
  4. 中耳奇形 生後より難聴があり、外耳にも小奇形を合併している場合があります。
  5. 術後症 以前に耳の手術を行った既往があり、真珠腫性中耳炎が再発したり、現在も難聴・耳漏に悩まされている方などです。


これら疾患の診断には問診、顕微鏡下での鼓膜の診察、精密な聴力検査、CT検査などを行います。治療は全身麻酔下に平均12日間の入院で、鼓室形成術あるいはアブミ骨手術を行います。
術後は定期的に経過観察を行います。特に真珠腫性中耳炎の患者様は再発・遺残することがあるので、長期に経過観察を行っています。
その他では鼓膜に小さい穿孔のある慢性中耳炎には外来で、ベスキチンパッチ法による鼓膜穿孔閉鎖術あるいは局所麻酔下で接着法による鼓膜形成術を行っています。幼小児と高齢者に多い、難聴、耳閉感を伴う滲出性中耳炎には鼓膜切開、経鼓膜チューブ挿入術も積極的に行っています。

最近5年間の手術実績

入院して手術を施行した症例の内訳は以下のとおりです。
2008年2009年2010年2011年2012年
鼓室形成術171188219210255
アブミ骨手術31271313
内耳窓閉鎖術03533
鼓膜形成術311982026
合計205222239246297

鼓室形成術の病名の内訳は以下のとおりです。
鼓室形成術を行った症例の診断名2008年2009年2010年2011年2012年
真珠腫性中耳炎
(上鼓室型、後上方型、癒着型、二次性、先天性)
86818590109
慢性中心穿孔性中耳炎
(中心穿孔性、鼓室硬化症、外傷性)
4054775370
他院術後症症例
(再穿孔、根治術・聴保根治術後耳、再発・遺残真珠腫)
3544515559
中耳奇形25139
その他
(コレステリン肉芽腫、耳小骨離断、中耳異物、中耳炎後遺症)
84598
合計171188219210255

鼓室形成術の手術件数は、週刊朝日MOOKの『手術数でわかるいい病院』のランキングでは、ここ数年常に10位以内です。

手術方法について

次に我々の手術方法について 説明します
まず、正常な右側の鼓膜所見を示します。

真珠腫性中耳炎について詳しく記述します。
真珠腫性中耳炎とは鼓膜の一部が中耳側にへこんで、袋状になり、そこに耳垢などがたまって真珠のような白い塊(真珠腫:Cholesteatoma)が出来る病気です。

症状

  • 初期は無症状
  • 耳だれ(感染をおこして、悪臭を伴うことが多い)
  • 難聴(耳小骨を破壊する、さらに進むと内耳を障害して感音難聴を生じる)

真珠腫性中耳炎の合併症

進行すると、様々な合併症を生じます。
  1. 内耳の三半規管が破壊:めまい
  2. 顔面神経を障害:顔面神経麻痺
  3. 頭蓋底の骨を破壊して、感染を伴うと髄膜炎や脳膿瘍など頭蓋内の病気を生じ、生命を危うくすることがあります。

次に真珠腫性中耳炎のうち1番多いタイプである上鼓室型真珠腫性中耳炎の手術直前の鼓膜所見を示します。

1

2

3

3例とも鼓膜の上部が陥凹して、そこに真珠腫塊があり、細菌の感染があり、悪臭のある耳漏が生じていた例で
1.上鼓室の陥凹部は小さいが、そこに真珠腫塊があり、真珠腫は深く上鼓室・乳突洞に侵入していた。
2.上鼓室の陥凹が大きい例で,骨破壊があり、真珠腫塊が充満している。
3.さらに広範な骨破壊を認め、真珠腫塊を清掃した後で大きく陥凹して、耳小骨がほとんど消失しているのがわかる。真珠腫は乳突洞に深く侵入、この症例は内耳の三半規管の外側半規管の骨欠損があり、めまいがあった。

真珠腫性中耳炎の治療は唯一手術ですが、手術的治療を行っても手術前と同じように鼓膜がへこんで、真珠腫が再生する再発性再発と真珠腫のごく一部の取り残しによる遺残性再発が生じることがあるので、治療が難しい病気です。世界中で手術方法は様々報告されています。つまり標準的な手術方法がまだ確率されていないと言えます。

真珠腫性中耳炎の問題点と対策

○問題点
  1. 再発する
  2. 遺残がある

○対策
  1. 手術法の工夫 再発しない手術方法
  2. 段階手術 遺残の点検のため2回手術

私は以下に示す独自な手術方法を行い、再発が最近はなくなっており、優れた手術法であると考えています。
我々の手術法は全身麻酔で行っています。
入院期間はほとんどの例で2週間以内で、全身麻酔下による耳介の後ろに切開を行う鼓室形成術です。
特に真珠腫性中耳炎、術後再発耳にたいしては
外耳道削除(型)鼓室形成術・外耳道再建術
Canal wall down tympanoplasty with canal reconstruction
を行っています。その再建に患者さんの耳介の軟骨を一部採取して利用する方法であり、その再建時に再び上鼓室がへこまない工夫を行い、良好な結果を得ています。

取り残し(遺残)が疑われる場合は半年から1年後に段階手術の2回目を行い、対策しています。我々の方法は明視下手術なので、段階手術の頻度は減少していますが、それでもまだ2回行うことをあらかじめ説明して、実際段階手術を行う確率は20%程度あるのが現状です。
術後の形態は再建を行うので良好です。耳掃除に頻回に通う必要はありませんが、真珠腫性中耳炎は少なくとも5年間経過を見るようにしています。2年を過ぎると1年に1回の定期的診察です。次に5年経過した上鼓室型真珠腫の鼓膜所見を示します。

症例

右上鼓室型真珠腫 40歳 女性
術前の鼓膜と我々の手術法を行って5年経過した時の術後の鼓膜

上鼓室に真珠腫の侵入部位の陥凹があり、耳垢と同様の成分である真珠腫があり、鼓膜の上部から外耳道の上部が真珠腫のため膨隆しています。右は我々の術式を行って5年経過した鼓膜の所見です。形態は良好でツチ骨の上方の真珠腫侵入部位は形成した軟骨で再建されていて、ほぼ正常な外観を呈しているのが、おわかりになると思います。

術前

術後5年経過

手術成績

手術の成績は2007年のデータです。2007年に行った鼓室形成術177例中、元々内耳障害があり聴力改善が不可能な症例や、段階手術の1回目で聴力改善手術を併用していない症例を除く、151例での聴力成績です。手術の術後聴力成績は、日本耳科学会の判定基準(2000)により聴力が改善したかを判定しました。

全症例の聴力成績は、121/151(80%)でした。疾患別で見ると、

鼓膜に穿孔のある慢性中心穿孔性中耳炎(慢性中耳炎の炎症のなれの果てである鼓室硬化症8例も含む)は39耳、中耳奇形が6耳、耳小骨離断などが2耳でした。これら、慢性中心穿孔性中耳炎、中耳奇形などの非真珠腫症例は、47耳あり、術後経過観察ができなかった1耳を除いた46耳の成功率は、38/46(83%)でした。

真珠腫性中耳炎新鮮例は84耳で、段階手術のため聴力改善手術を併用していない11耳と術後経過観察ができなかった2耳を除いた71耳の成功率は、56/71(79%)でした。

他院で手術した後に真珠腫が再発したなどの他院術後症例が46耳でした。他院術後耳症例とは、以前行われていた中耳根治術により、術後の耳の中の形態が悪く、耳垢が溜まり定期的な耳掃除が必要で耳漏がでるなど症状がある方や、真珠腫が再発した方、鼓膜が浅く作られたり、再度鼓膜穿孔し聴力が改善しなかった症例などです。これら46耳のうち、元々内耳障害があり聴力改善が不可能な症例や段階手術のため聴力改善手術を併用していない12耳を除いた34例の成功率は、25/34(74%)でした。

上記のように、良好な成績です。慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎と診断されている方、難聴、耳閉感、耳漏でお困りの方は、ぜひ、ご受診ください。

Copyright© Seirei Yokohama Hospital. All rights reserved.